いま使っているターンテーブルはVICTOR JL-B77 という48年前に作られたターンテーブル。
ダイレクトドライブという、ターンテーブルをモーターで直接回す方式で、レコード再生用の低速でスムーズな回転を実現するため20極60スロットという手の込んだモーターが採用されています。
スムーズで安定した回転のフォノモーター、精巧に作られたトーンアーム、積層盤のキャビネット、ダストカバーもアクリル自体が分厚く、透明感も高いコストのかかったものです。オーディオブームの黄金期の製品は非常に誠実に作られていることが実物を見て、使ってみて、大変よくわかります。
VICTORの名カートリッジ X-1Ⅱ
可動部や電気的な部分もすこぶる調子が良いJL-B77ですが、VICTORのターンテーブルにはやはりVICTORのカートリッジをと思い、名カートリッジの誉れ高い X-1Ⅱ を手に入れました。スタイラスはシバタ針。
これまで再生音のバランスが良いOrtfon(VMS20E MkⅡ)と、たまにEMPIREを使っていました。VICTOR X-1Ⅱを聴くと、オルトフォンでは聞こえない音が聞こえるではありませんか。なんというか、高音から低音までの音の出る空間が上下左右に広くなった感じです。高音はくっきりして解像感が高く、低音はパワフル。「こんな音がこのレコードに刻まれていたのか!」と驚いたのでした。
ちなみに、聴いていたのはジャクリーヌ・デュプレのエルガーのチェロ協奏曲。
ジャズのレコードよりクラシックの、特に交響曲や協奏曲等のオーケストラものは単純に「多くの音」が入っており、かつ、レコード自体の録音のレベル・録音機材の状態も様々なので再生が難しい印象があります。「いい音で」再生するのが難しい。
実際、ジャズではOrtfon、VICTORどちらのカートリッジでも「いい音」は出ます。しかし、クラシックのレコードは音質にかなり差があります。オルトフォンのカートリッジではどうしてもダイナミックレンジが狭く、空間も広がらない音で聴こえるレコードもありました。
カートリッジで音が激変
そんな「どうも音が広がらない…」と感じるレコードの一枚が「赤い音」でおなじみ、ソヴィエト時代のオリジナルメロディア。ロジェストヴェンスキーのチャイコフスキー交響曲第5番です。
この「音の広がらない」チャイコフスキーをVICTORのカートリッジで聴いてみると、鮮度の高い音に聞こえるのです。オルトフォンより高音域から低音域まで淀みなくクリアに聴こえます。ソ連時代の白黒フィルムからカラーVTRになった感じです。(HD画質になったわけではありません。あくまでVTRレベルの解像感。)
さすが高級カートリッジ。中音域しか入っていないような録音の良くないレコードでも鮮やかに美しい音で再生できるようです。