モトアザブ退屈日記

日々のモノ・コト・忘備録。クルマ、時計、オーディオとか骨董とか。

オリエントの古い時計 グランプリ・オリエント・スペシャル 25石

オリエントは1901年創業の「吉田時計店」(下谷区上野元黒門町)をルーツにもちます。

吉田時計店は1920年、東洋時計製作所として置時計を製造、1934年には腕時計の製造を始めます。

戦後、多摩計器株式会社を経て、1951年(昭和26年)にオリエント時計株式会社と称号変更します。

この「グランプリ・オリエント・スペシャル」は1961年製造。当時のオリエントの最高級機種です。

セイコー「グランドセイコー」、シチズン「グロリアシチズン」、そしてオリエントの「グランプリオリエント」を表して「国産高級時計の3G」と言うそうです。

 

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グランプリ・オリエント・スペシャル

古い腕時計を集め始めてから「いつかは手に入れたい」と思っていた時計がこの「グランプリ・オリエント・スペシャル」です。N型機械、25石。手巻き3針、14K貼りのドレスウォッチです。

5姿勢調整済みの機械を搭載しています。

「5姿勢調整済み」とは、「文字盤上、文字盤下、6時上、3時上、9時上」によって大きく狂わないように調整されていることを示します。

 

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1961年製、昭和36年です。「シャボン玉ホリデー」の放送開始の年。

当時の定価9,600円。1961年の大卒初任給が12,900円(国家上級甲種)。現在の価値感覚でいうと127,000円くらい。

 

”あの時計”に似ている

見て分かる通り、パテック社「カラトラバ」に非常によく似たデザインです。

砲弾インデックス、ドット・ミニッツマーカー、ドーフィン・ハンド。

この頃の国産品は、腕時計に限らず舶来の何かに範をとることが多かったと思われます。現在のように意匠権や商標権、著作権等がきちんと確立していなかった時代。優秀な技術や意匠は模倣され、結果、技術力や輸出力の向上に役立ったのでした。自動車、家電製品、時計…どの分野でもデッドコピーとリバースエンジニアリングで日本がひとかどの工業国にのし上がったといえます。

 

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文字盤は外周に行くに従ってカーブしているボンベダイヤル。秒針もダイヤルに沿ってカーブしているアンティーク時計の文法どおりのもの。立体的なドーフィンハンドと特徴的な砲弾型のアワーインデックス。

14Kゴールドフィル(金貼り)のケースはしっとりとした艶を湛えています。

文字盤サイズとスムースベゼルの幅、各インデックスの大きさや筆記体の書体までもが絶妙で、端正な佇まいです。

繊細なディテールは眺めていて飽きません。ホント美しい...

割と状態が良くキレイな個体なので、身につけることを躊躇ってしまうのが目下の悩みです。

 

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